4 本場の操業

 本場では基本的に下げ場と同じ作業を繰り返しますが、既に脱炭が進んでいる為、地鉄は溶けにくくなっているので、それに応じた炉の状態を維持し炭の使い方もそれに合わせて変えて行きます。

4.1 本場での炉底の作り方

 基本的に本場の場合も下げ場の場合と同じで。火床の底には湿気を持った粉炭を敷き詰めますが、如雨露による散水は少なめにして、地鉄の状態によりその量を調整します。

4.2 本場での地鉄の配置

 下げ場が終わった地鉄は掌を広げた様な、やや平らな形に溶けて固まっています。そして底の方は殆ど風が当たっていない為、脱炭もあまり進んでいません。本場では十分に脱炭が進んでいない底の部分を羽口側の高い位置に来るようにして、羽口の前1寸位いの所に立てるように配置します。この作業による脱炭は銑が溶融しながら滴り落ちる時に最も激しく起こっていると考えていますので、この様な配慮が必要になります。又、地鉄のバランスが悪く立ちにくい時は、脱炭の進んだ地鉄のかけらを添える事も有ります。この時の地鉄の目方は下げ場ではほとんど減っていないので、1貫目程度あります。


本場での地鉄の配置

4.3本場で使用する炭

 本場で使用する炭は、既にある程度脱炭された地鉄を溶かすため、より高温を得やすい松炭を主に使用します。炭の大きさも下げ場で使用した雑木の炭に比べて若干小さく切ったものを使います。

4.4 本場での作業および送風

 炭は地鉄の上にたっぷり積み上げます。送風は下げ場の場合と同じように、地鉄の部分的な温度のむらを作らないようにして、徐々に温度を上げて行きます。15分程経って地鉄全体が赤くなり部分的に溶け始めると、炎の色も下げ場の時と同じく部分的に黄色く変化し始めます。それにつれて送風量も徐々に増やします。本場の場合、地鉄が溶けて脱炭が進んでいる時の炎の色は下げ場よりやや薄く全体に輝く様な黄色で、その状態を保持するように送風量を調節します。

 炎の色が変わり始めてから30〜40分経って地鉄がほとんど溶けて反応が収まると、炎の色が少し落ち着いて薄い黄色になります。こうなると更に送風量を増やし炉内の温度を上げて、溶け残った地鉄を溶かします。次に地鉄の上の炭を取り除き完全に地鉄が溶けている事を確かめ、白熱の塊となった地鉄を羽口の下から剥がすように少し移動します。この時、状態が良ければ、火床の中からは煮物をする様なグツグツという音が聞こえてきます。地鉄がちゃんと固まっているようなら送風を止めて、そのままそっと引き出し地鉄をまとめる作業に入ります。既に地鉄は鋼か或は包丁鉄に近い状態になっているので、白熱した状態で端の方を摘んで火床の外に引き出しても、壊れる心配は有りません。

 この本場では、単純に脱炭の作業を行う事はそれ程難しい事では有りませんが、安定た品質の鋼を作る事は極めて難しく、炉内の雰囲気や温度の調整にはかなりの経験が必要になります。

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